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横浜地方裁判所 平成5年(行ウ)54号 判決

横浜市旭区柏町五八-一

原告

河野禮通

横浜市保土ケ谷区帷子町二-六四

被告

保土ケ谷税務署長 古田善香

右指定代理人

小暮輝信

田部井敏雄

池上照代

内田健文

加藤正一

中澤彰

山本善春

木村忠夫

上田幸穂

主文

一  本件訴えのうち、被告が原告に対し平成四年三月五日付けでした原告の平成元年分の所得税に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、総所得金額三三六万五五七四円、納付すべき税額二二万五一〇〇円及び重加算税一万七五〇〇円を超える部分の取消しを求める部分を却下する。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が平成四年三月五日付けでした原告の昭和六二年分以降の青色申告承認を取り消した処分を取り消す。

二  被告が平成四年三月五日付けでした原告の昭和六三年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、平成元年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  本件は、被告により、昭和六二年分以降の所得税の青色申告承認を取り消され、また、昭和六三年分及び平成元年分の各所得税の申告について更正処分を受け、及びこれらについて重加算税の賦課決定処分を受けた原告が、これを争い、それらの取消しを求めている事案である。

二  争いのない事実

原告は、河野機電設計の名称で、精密機械の設計業を営んでいた者であるが、昭和六三年分及び平成元年分(以下「本件係争年分」という。)の確定申告、これらに対する被告の更正処分及び重加算税の賦課決定処分、それらに対する原告の異議申立て、被告の異議決定、原告の審査請求、これらに対する裁決の経緯は、別表一、二記載のとおりである(以下、裁決により一部取り消された後の更正処分を含めて「本件各更正処分」といい、重加算税の賦課決定処分を「本件各賦課決定処分」という。)。また、原告の青色申告承認の取消処分(以下「本件青色取消処分」という。)及びこれに対する異議申立て、被告の異議決定、原告の審査請求、これに対する裁決の経緯は、別表三記載のとおりである。

三  争点

本件の争点は、(1) 原告の平成元年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、別表二記載のとおり、国税不服審判所長の裁決により取り消された部分についても、原告に訴えの利益があるか、(2) 本件青色申告取消処分には、理由があるか、具体的には、原告には、所得税法(以下「法」という。)一五〇条一項に規定する、帳簿書類の備付け、記録、保存が大蔵省令で定めるところに従っていなかった事由があるか、また、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ペいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があるか、であり、(3) 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の適法性、具体的には、原告主張の経費を必要経費として認めるべきか等である。

これらについての双方の主張は、以下のとおりである。

1  訴えの利益について

(被告の主張)

被告が平成四年三月五日付けでした原告の平成元年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち総所得金額三三六万五五七四円、納付すべき税額二二万五一〇〇円及び重加算税一万七五〇〇円を超える部分は、別表二記載のとおり、国税不服審判所長の裁決により、取り消されているから、これらの取消しを求める訴えは不適法である。

2  本件青色取消処分の適否について

(被告の主張)

法は、一五〇条一項において、その年における業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が法一四八条一項に規定する大蔵省令で定めるところに従って行われていないこと(一号)、その帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること(三号)等を、青色申告承認の取消事由としている。

青色申告者は、その事業所得を生ずべき業務につき備え付ける帳簿書類について、法一四八条及び法施行規則五六条一項ただし書きにより、昭和四二年八月三一日大蔵省告示一一二号(以下「告示」という。)の定める簡易な記録の方法及び記載事項によることができるが、この場合であっても、現金出納等に関する事項、売掛金に関する事項、買掛金に関する事項及び減価償却資産に関する事項等を記載する帳簿書類を備え付け、その取引きを、整然と、かつ、明瞭に記録しなければならない。そして、現金取引の年月日、事由、出納先及び金額並びに日々の残高を整然と、かつ、明瞭に記録する帳簿すなわち現金出納帳を備え付け(告示別表第一、一(イ)(一)第二欄)、これを保存しなければならない。

本件についてみると、被告が行った原告の昭和六一年分ないし平成二年分の所得税調査(以下「本件税務調査」という。)において、原告は、被告所部係官の帳簿提示の求めに対し、コンピューター出力による昭和六一年一月から平成二年一二月までの「現金帳」と題する帳簿を提示したのみで、その他の帳簿については、「ない」として、提示しなかった。

さらに、右帳簿も、その記帳内容は、正確性に欠け、原告の取引内容のすべてを記帳したものではなかったばかりか、その記帳の目的及び帳簿の正確すら判然としないものであったことから、原告の帳簿書類には、記帳の正確性が認められず、かつ、帳簿書類の備付けにも不備があると認められた。したがって、原告においては、前記法令に規定する帳簿書類の備付け等を行っていないものと認めざるを得なかった。

(原告の主張)

被告の係官は、本件税務調査に当たり、原告の帳簿を勝手に持ち去ったまま、いまだ返却していないから、原告の帳簿の備付けが不十分であるなどという被告の主張は、失当であり、本件青色取消処分は、憲法三一条等に違反し、取り消されるべきである。

3  本件各更正処分の適否について

(一) 旅費交通費について

(被告の主張)

必要経費について定める法三七条一項によれば、旅費交通費が業務について生じた費用であるといい得るためには、出張先はもちろん、利用した交通手段、経路及び利用目的等、事業との関連性が明確でなければならない。しかるに、原告は、本件税務調査において、被告所部係官に対し、旅費交通費に係る証拠資料として、現金帳及び高速道路の通行券等を提示したのみで、事業との関連性に係る説明をせず、また、調査によっても、右関連性が確認されなかったことから、原告主張の旅費交通費を本件各更正処分において、必要経費の額に算入しなかったものである。

(原告の主張)

原告は、昭和六三年分として四三万二八六〇円、平成元年分として四〇万〇三九九円の旅費交通費を必要経費として計上した。ところが、被告は、青色申告の承認を取り消しておいて、それを理由に旅費交通費を認めないというのは、まったく違法である。実際にも、原告の取引先は、神奈川県外に点在しており、そのため電車又は車を使用するし、高速道路の通行料等を必要経費として算入するのは、どの事務所でも同じはずである。

(二) 平成元年分の貸倒金について

(被告の主張)

原告は、有限会社チームテクニカディム(以下「チームテクニカ」という。)に対する昭和六三年分の売上金額一三一万七八〇〇円が回収不能になったため、右金額を平成元年分の貸倒金として必要経費の額に算入した旨主張する。しかし、原告は、平成元年分の所得税の確定申告において、貸倒金を必要経費の額に算入したことはないから、原告の主張は、前提を欠き、失当である。原告が、右売掛金を貸倒金として必要経費の額に算入したのは、平成二年分の所得税の確定申告においてである。

(原告の主張)

原告の昭和六三年分の前記売掛金は、相手の会社が同年度に倒産したために回収不能になったので、これを平成元年度に貸倒金として処理した。それにもかかわらず、被告がこれを認めないのは、不当である。

(三) ワコムからの仕入れについて

(被告の主張)

原告は、株式会社ワコム(以下「ワコム」という。)からの仕入れ一一〇万円は、平成元年分の仕入金額であるにもかかわらず、被告がこれを平成二年分の仕入金額であると認定したのは不当である旨主張する。しかし、裁決において、原告の主張どおり認定され、同年分の更正処分の一部が取り消されている。

(原告の主張)

ワコムからの仕入れ分は、領収書からみて、平成元年分の仕入れであることは、明らかであるにもかかわらず、これを平成二年分の仕入れであると認定したのは、不当である。

(四) 繰延資産の償却費について

(被告の主張)

原告は、昭和六一年及び六二年に購入したCADソフトプログラムの償却期間は、二年である旨主張する。

他の者からソフトウエアの提供を受けるために要した費用は、所得税法施行令(以下「法施行令」という。)七条一項四号ハに規定する役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用に該当し(所得税法基本通達(以下「通達」という。)二-二八の二)、その購入費用は、繰延資産として資産に計上するとともに、各年分の償却費の金額を必要経費に算入する。右償却費の計算は、法施行令一三七条一項二号に基づいてされるが、ソフトウエアの償却期間については、通達五〇-三により、従前から五年とされている。

(原告の主張)

原告が購入したソフトプログラムの償却期間は、二年とすべきである。被告の主張する法施行令は、平成二年に改正されたものであるから、これを適用するのは、不当である。原告が購入したソフトは、技能の習得のために使用するものであるから、通達三七-二四によるべきである。また、現に、原告は、五年も使用しておらず、これを二年で、他に売却している。

(五) 租税公課について

(被告の主張)

原告は、昭和六三年及び平成元年に支払った昭和六一年分の県税は、支払った年度の必要経費に算入すべきである旨主張する。しかし、租税の必要経費算入の時期は、原則として申告、賦課決定等の手続によりその納付すべきことが具体的に確定したときによる(通達三七-六)から、原告の主張する県税の納付税額の通知が昭和六一年中にされたものであれば、同年中にその納付額が確定することになる。そうすると、右県税は、昭和六一年分の必要経費として算入すべきものである。

(原告の主張)

原告は、昭和六三年と平成元年に、昭和六一年分の県税一九万五二〇〇円及び一八万一〇〇〇円を支払っており、これは、租税公課として、損金勘定になる。被告のいうように、期限の過ぎた支払いは経費にならないという法律はない。

(六) トピア技研からの仕入れについて

(被告の主張)

原告は、被告が原告の昭和六三年分の収入金額に算入した株式会社横浜トレースセンター(以下「トレースセンター」という。)に対するソフトプログラムの売上金額は、トレースセンターに依頼された立替取引に係るものであり、これに対応する仕入れとして、その購入代金一七七万二〇〇〇円をトレースセンターに代わって昭和六三年に有限会社トピア技研(以下「トピア技研」という。)に支払ったから、この金額を仕入れ金額に算入すべきであるなどと主張する。

しかし、トピア技研は、原告主張の振込送金を否定しているなど、関係証拠によれば、原告が右金額を支払ったことはないことが明らかである。

(原告の主張)

原告は、昭和六三年一一月三〇日、トレースセンターに代わって、トピア技研に対し、ソフトプログラムの購入代金一七七万二〇〇〇円を支払ったものであり、このことは、トレースセンターを依頼人として、駿河銀行横浜万騎が原支店から東海銀行守山支店のトピア技研名義の口座に同額の送金がされた旨の振込依頼書により、明らかである。

(七) 電気の使用料について

(被告の主張)

被告は、原告の電気使用料について、原告が東京電力に支払った電気料金(実額)から、家事上の支出に相当する額(以下「家事関連費相当額」という。)を控除して算出したものであるところ、家事関連費相当額については、総務庁統計局作成の家計調査年報の電気料金平均値を使用したものである。原告が一般に比べて大きな容量のアンペアを使用しているとすれば、アンペア数が大きくなれば基本料金も高額となる電気料金の体系からして、全体の料金額の増額に伴って、同一使用量当たりの家事関連費相当額も増加するはずである。したがって、原告が大容量のアンペアを使用しているからといって、一般的な容量使用を前提とした家計調査年報の電気料金平均値を使用していた被告の推計が不当であるということはできない。

(原告の主張)

原告は、精密機械の設計事務所を営み、大型のコンピューターを三台も使用するなど、平均の三倍の電力量を必要とし、現在の電気使用量は、一二〇アンペアである。これについて、被告主張のようなやり方で算出した原告の電気料金の計算は、失当である。

(八) 本件各更正処分の根拠について

(被告の主張)

被告が本訴において主張する原告の本件係争年分の事業所得(総所得金額)及び納付すべき税額の算出根拠は、別紙「原告の事業所得及び納付すべき税額」記載のとおりである。ところで、本件各更正処分に係る総所得金額は、昭和六三年分が二五〇万一二六三円、平成元年分が三三六万五五七四円であり、納付すべき税額は、昭和六三年分が一五万二六〇〇円、平成元年分が二二万五一〇〇円である。そして、被告が本訴で主張する原告の本件係争年分の総所得金額及び納付すべき税額は、それぞれ、いずれも本件各更正処分額を上回るから、本件各更正処分は適法である。

(原告の主張)

原告の昭和六三年分及び平成元年分の総所得金額は、別表一、二記載のとおりであり、納付すべき税額は、いずれも零である。

4  本件各賦課決定処分の適否について

(被告の主張)

原告は、本件係争年分の所得税の確定申告において、昭和六三年分の売上(収入)金額を二〇五〇万五八八〇円、平成元年分のそれを一七七四万七九七二円と記載した青色申告決算書及びそれに基づいて算出した所得金額を記載した確定申告書を被告に提出した。そして、原告は、本件調査における被告所部係官の質問に対し、収入のすべては、駿河銀行横浜万騎が原支店の原告名義の普通預金口座(以下「公表口座」という。)に入金している旨を申し立てるとともに、現金帳のほか、収入に関する書類として、「平成一年売り上げ」と題する表(以下「平成一年売り上げ表」という。)のみを、また、預金に関する資料として公表口座に係る口座写しのみを提示した。これに対し、被告が原告の仕入先等に取引に関する照会などをして調査したところ、原告の本件係争年分の収入金額は、昭和六三年分が二五九八万〇七三〇円(別紙一記載のとおり)、平成元年分が二四四三万六二六七円(別紙二記載のとおり)であり、原告は、収入金額を過少に申告していたことが判明した。ことに、原告は、大洋工業設計株式会社等からの収入については、公表口座外の原告の口座に振込入金させるなどにより、現金帳及び平成一年売上表に記載せず、収入金額から除外していた。これらの一連の行為は、原告の確信的な意図に基づいて行われたから、右は、国税通則法六八条一項の「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し」た場合に該当する。

そこで、被告は、同条の規定に基づき、昭和六三年分については、更正により納付すべき税額一五万円(同法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切捨て)を加算税の基礎となる税額として、これに一〇〇分の三五を乗じて計算した重加算税五万二五〇〇円を、また、平成元年分については、更正により納付すべき税額(裁決後のもの)二二万五一〇〇円のうち同法六五条四項に定める正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除した後の金額五万円(前同様の切捨て)を加算税の基礎となる税額として、これに一〇〇分の三五を乗じて計算した重加算税一万七五〇〇円をそれぞれ賦課決定した。他方、本訴において、被告が主張する原告の本件係争年分の納付すべき税額に基づいて算定される重加算税の基礎となる税額は、別紙六及び七記載のとおり、昭和六三年分が一六万円、平成元年分が二〇万円となるところ、これらの金額は、本件各賦課決定処分の基礎となる税額を上回るから、右の処分は、適法である。

第三争点に対する判断

一  本案前の抗弁について

被告が平成四年三月五日付けでした原告の平成元年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、総所得金額三三六万五五七四円、納付すべき税額二二万五一〇〇円及び重加算税一万七五〇〇円を超える部分は、別表二記載のとおり、既に国税不服審判所長の裁決により取り消されているから、この部分の取消しを求める訴えは、不適法である。

二  本件青色取消処分の適否について

1  証拠(乙八号証、一〇ないし一四号証、五五、五六号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、次の事実が認められる。

被告の所部係官の富田一男は、原告の昭和六一年分ないし平成二年分の所得税の調査(本件税務調査)のために、平成三年四月二二日初めて原告方を訪れ、その事業の概要を聴取し、その後、五月一六日、再度、原告方を訪れて帳簿の提示を求めた。その際、原告が提示した帳簿は、コンピューター出力に係る昭和六一年一月から平成二年一二月までの「現金帳」と題する帳簿(乙一〇ないし一四号証)だけであり、そのほかに駿河銀行横浜万騎が原支店の原告の普通預金通帳、そのコピー、売上の納品伝票の控え、経費の領収書、期末試算表等があった。そして、原告は、右現金帳のほかに、帳簿はないと述べた。ところで、原告によれば、この現金帳は、被告が本件調査に着手した後に伝票等が作成したものであり、しかも、日々の入出金を正確に記帳すれば生じ得ないはずの、現金残高がマイナスになる箇所が散見されたり、預貯金等からの入金及び預貯金等への出金の記帳がないなど、現金に関する記帳漏れが随所に認められた。また、昭和六三年分ないし平成二年分の売上について、大洋工業設計株式会社他五社からの売上金が記帳されておらず、昭和六二年分の売上金額については、現金帳に記載された額の方が原告の申告額より多かったり、昭和六三年分及び平成元年年分の仕入金額については、原告の申告額より、被告の反面調査による金額の方が多かったりした。しかし、現金帳には、これらの部分は、いずれも記載されていなかった。

2  右によれば、被告主張のとおり、青色申告承認の取消事由、すなわち、帳簿書類の備付け、記録又は保存が法一四八条一項に規定する大蔵省令に定めるところに従って行われておらず、また、帳簿書類の記載事項の全体について、その真実性を疑うに足りる相当な理由があるものと認められる。そうすると、法一五〇条一項一号及び三号該当事由があるとして、原告の昭和六二年分以降の青色申告承認を取り消した本件青色取消処分は、適法である。

原告は、被告の係官が原告の帳簿を勝手に持ち去って返さないかのような主張をし、乙六〇号証には、これに沿う記載があるが、乙五五、五六号証、五八、五九号証に照らし、にわかに採用することができない。そればかりか、原告の主張する右「帳簿」というものは、乙五五号証添付の「預り証」に記載のものをいうものと解されるところ、それらの中に、前記法が要求する帳簿が含まれているとは、にわかに認め難いから、いずれにせよ、原告の主張は、その前提を欠き、失当である。

三  本件各更正処分の適否について

1  旅費交通費について

原告は、本件係争年分の旅費交通費について、原告主張額を必要経費として認めないのは、不当である旨主張し、甲六号証の一ないし九(高速道路の領収書)を提出する。しかし、法三七条一項によれば、旅費交通費が業務について生じた費用であるといえるには、出張先、利用した交通手段、経路及び利用目的等、事業との関連性が明確でなければならないと解されるところ、右領収書と原告の事業との関連は、原告本人の供述によっても、明らかではない。なお、弁論の全趣旨によれば、被告は、前記現金帳において、旅費交通費と記載された金額のうち、記帳されている日付及び金額が保存されている領収書の記載と一致するものを、必要経費として認定したものと認められる。原告の主張は、理由がない。

2  平成元年分の貸倒金について

原告は、チームテクニカに対する昭和六三年分の売上金額一三一万七八〇〇円に係る売掛金を平成元年分の貸倒金として算入したのに、必要経費として認めないのは不当である旨主張する。

しかし、証拠(乙一号証、三号証の二、九号証の二、五六、五七号証)によれば、原告が右売掛金を貸倒金として必要経費に算入したのは、平成二年分の青色申告について(ただし、一四五万円と記載されている。)であることが認められるから、右の主張は、失当である。なお、原告本人は、平成二年分の貸倒金として算入したのは、昭和六一年に取得した事業用車両の炎上事故に伴う損害金を貸倒金と誤って記載したものである旨供述するが、乙五六、五七号証、原告本人尋問の結果によれば、平成二年分の青色申告決算書の減価償却の明細欄には、炎上したはずの車両が、依然として記載されていることが認められるから、右供述は、にわかに採用することができない。原告の主張は、理由がない。

3  ワコムからの仕入れについて

原告は、ワコムからの仕入れ一一〇万円を平成元年分のものと認定しないのは、不当である旨主張するが、乙一号証によれば、国税不服審判所長は、裁決において、原告の主張を認めて、同年分の更正処分を一部取り消しており、被告も、本訴において、これに従った主張をしていることが明らかであるから、原告の主張は、失当である。

4  繰延資産の減価償却費について

原告は、昭和六一年と六二年に購入したソフトプログラムの償却期間は、二年であるのに、これを五年とする被告の償却は、不当である旨主張する。

ところで、乙五四号証の一ないし五によれば、他の者からソフトウエアの提供を受けるために要した費用は、法施行令七条一項四号ハに規定する役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用に該当し(通達二-二八の二)、その購入費用については、繰延資産として計上するとともに、各年分の償却費の金額を必要経費に算入することとなること、右償却費の計算は、法施行令一三七条一項二号の規定に基づき、ソフトウエアの購入費用の支出の効果の及ぶ期間(償却期間)の月数で除した金額に、その年において納税者が事業所得を生ずべき業務を行った期間の月数を乗じて計算することとなるところ、右ソフトウエアの償却期間については、通達五〇-三により五年とされていることが認められる。

原告は、現実に二年で売却したとか、右償却期間に係る取扱いが本件係争年分当時と異なるかのような主張をするが、実際に何年使用したかは、償却期間と関係がないと解されるし、右取扱いにも変化はないから、原告の主張は、失当である。また、原告は、原告が購入したソフトは、技能習得のために使用するものであるから、その償却は、通達三七-二四によるべきであるとも主張するが、右通達は、習得する技能が一身専属的なものである場合に、受講等が業務上必要な場合に限り、受講費用等を必要経費に算入できる旨を示したものにすぎず、ソフトウエアの償却期間を示したものではないから、右主張も、失当である。

5  租税公課について

原告は、昭和六三年中及び平成元年中に支払った昭和六一年分の県税一九万五二〇〇円及び一八万一〇〇〇円は、本件係争年分の租税公課として、必要経費に算入すべきである旨主張する。しかし、通達(乙五四号証の二)によれば、租税の必要経費算入の時期は、原則として、申告、賦課決定等の手続により、その納付すべきことが具体的に確定したときによるとされているから、右県税は、納付額が確定した昭和六一年分の必要経費として算入すべきものであり、実際の納付日によることはできないことになる。原告の主張は、理由がない。

6  トピア技研からの仕入れについて

原告は、原告がトレースセンターに代わって、昭和六三年一一月三〇日、トピア技研に支払ったソフトプログラムの代金一七七万二〇〇〇円を同年分の仕入金額に算入すべきであるなどと主張し、その証拠として、トレースセンターを依頼人とし、駿河銀行横浜万騎が原支店から東海銀行守山支店のトピア技研名義口座に一七七万二〇〇〇円を送金する旨の振込依頼票の写し(甲四号証)を提出する。

しかし証拠(乙七号証、四四号証、四九号証、五〇号証の一ないし四、五一、五二号証)によれば、原告主張の日に、駿河銀行横浜万騎が原支店において、右振込依頼票による送金のされた事実はないこと、また、トレースセンターは、原告に対し、右送金を依頼した事実を否定していること、トピア技研においても、右口座による送金を受けた事実を否定しており、右ソフトを原告やトレースセンターに納品した事実も否定していることが認められる。右によれば、甲四号証をもって、原告主張事実を裏付けるものとは、とうてい、いえない。そして、乙五〇号証の二によれば、右と同日付、同金額の原告のワコム宛振込依頼票が存在すること、原告本人尋問の結果によれば、原告は、右日付において、右金額の振込依頼をしたのは一度だけであり、原告自身、いったん、振込手続をした後、振込先を訂正したような記憶がある旨述べていることが認められることからすると、原告は、いったん、前記トピア技研宛振込依頼票を銀行窓口に提出して押印を受けたが、振込先の訂正を申し出て、ワコム宛のそれと差し替えたものと推認される(なお、乙四〇号証の二により認められるワコム宛の振込送金一七七万二〇〇〇円については、被告によって、昭和六三年分の所得金額の算定に当たり、同年分の仕入金額に算入されていることが認められる。)。したがって、原告の主張は、理由がない。

7  電気の使用料について

原告は、その事業が一般に比べて大容量のアンペアを使用しているので、一般的な容量使用を前提とした家計調査年報の電気料金の平均値を使用した被告の家事関連費相当額の推計は不適当である旨主張する。しかし、一般的に、使用するアンペア数が大きくなれば、電気料金の基本料金が高額となる電気料金の体系からして、全体の料金の増額に伴って、家事関連費も増大するものと考えられるから、仮に原告の主張を被告の計算に反映させるとすれば、全体の電気料金(実額)から控除する家事関連費はかえって増加することになる。したがって、原告の主張は、それ自体理由がなく、失当である。

8  その他

原告は、甲二四号証のクレジット代金支払明細書に記載された分割金を昭和六三年の必要経費に算入すべきであるかのような主張をするが、これが何の代金であるか判然としないばかりか、右に従って代金が支払われたことを裏付ける証拠もないから、その主張は、失当というべきである。

9  本件各更正処分の根拠及び適法性について

以上の認定及び証拠(乙一号証、二、三号証の各二、一〇ないし一五号証、一八ないし二二号証、二三号証の一及び二、二四、二五号証、二六号証の一ないし三、二七ないし三一号証、三二号証の一、二、三三号証の一ないし三、三四ないし三七号証、三八号証の一、二、三九号証、四〇号証の一、二、四一ないし四八号証、弁論の全趣旨)によれば、原告の本件係争年分の事業所得(総所得金額)及び納付すべき税額は、別紙「原告の事業所得及び納付すべき税額」記載のとおりであると認められる。

また、本件各更正処分に係る総所得金額は、前記争いのない事実のとおり、昭和六三年分が二五〇万一二六三円、平成元年分が三三六万五五七四円で、右各金額に対する納付すべき税額は、前者が一五万二六〇〇円、後者が二二万五一〇〇円である。

そうすると、原告の本係争年分の事業所得及び納付すべき税額は、本件各更正処分に係る総所得金額及び納付すべき税額を上回っているから、本件各更正処分は、適法である。

四  本件各賦課決定処分の適否について

1  証拠(乙二、三号証の各一、二、一五ないし一七号証、四八号証、五五、五六号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、次の事実が認められる。

原告は、本件係争年分の所得税の確定申告において、昭和六三年分の収入金額を二〇五〇万五八八〇円、平成元年分のそれを一七七四万七九七二円と記載した青色申告決算書及びこれに基づいて算出した所得金額を記載した確定申告書を提出した。そして、本件税務調査において、被告所部係官富田一男の収入金額についての質問に対し、収入はすべて駿河銀行横浜万騎が原支店の原告名義の普通預金口座(公表口座)に入金していると述べ、収入に関する書類としては、現金帳のほかに、平成一年売上表だけを、また、預金に関する資料として、右口座の通帳及び口座写しだけを提示した。

これに対し、被告は、原告の取引先等に照会及び調査をした結果、原告の昭和六三年分の収入金額は、二五九八万〇七三〇円(内訳は、別紙一のとおり)、平成元年分のそれは二四四三万六二六七円(内訳は別紙二のとおり)であり、原告の確定申告は、収入を過少に申告していることが判明した。なお、原告は、有限会社アーキテクツインターナショナル、大洋工業設計株式会社等六社からの収入については、公表口座とは別の口座に振込入金させるとともに、前記現金帳及び平成一年売上表には記載せず、いずれも収入金額から除外していたが、これらの金額は、合計で一六〇〇万円を超えていた。

右の事実は、国税通則法六八条一項に規定する「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し」た場合に当たる。

2  右によれば、原告は、昭和六三年分については、納付すべき税額一五万円(同法一一八条三項により一万円未満切捨て)を基礎として、これに一〇〇分の三五を乗じて計算した五万二五〇〇円を、また、平成元年分については、納付すべき税額二二万五一〇〇円のうち、同法六五条四項に定める正当な理由があると認められる事実に基づく税額を控除した後の金額五万円(前同様の切捨て)を基礎となる税額として、前同様に計算した一万七五〇〇円を、重加算税として支払う義務がある。

ところで、本訴において、被告が主張する原告の納付すべき税額に基づいて算定される重加算税の基礎となる税額は、別紙六及び七のとおり、昭和六三年分が一六万円、平成元年分が二〇万円となり、これらは、前記本件各賦課決定処分の基礎となった税額を上回るから、本件各賦課決定処分は、適法である。

五  以上によれば、本件訴えのうち、被告が原告に対し平成四年三月五日付けでした平成元年分の所得税に係る更正処分及び重加算税の賦課決定処分のうち、総所得金額三三六万五五七四円、納付すべき税額二二万五一〇〇円及び重加算税一万七五〇〇円を超える部分の取消しを求める部分は不適法であるから、却下し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 裁判官 近藤裕之)

原告の事業所得及び納付すべき税額

1 昭和六三年分

(一) 収入金額 二五九八万〇七三〇円

右金額の内訳は、別紙一のとおりであり、売上金額から決済に当たり差し引かれた振込手数料相当額を控除したものである。

(二) 仕入金額 一三九一万一五二五円

右金額の内訳は、別紙三のとおりであり、仕入金額に決済に当たり支払った振込手数料相当額を加算した額である。

(三) 必要経費の合計額 八三三万八一八三円

右金額は、次の(1)ないし(19)の合計額である。

(1) 租税公課 八万一五〇〇円

昭和六三年五月一一日付けの自動車税の納税告知に基づき、同年五月二〇日に納付した同税の額である。

(2) 荷造運賃 二万四三〇〇円

原告の昭和六三年分の所得税青色申告決算書(以下「六三年分決算書」という。)に記載された金額である。

(3) 水道光熱費 一四万一二五四円

原告が東京電力に支払った昭和六三年分の電気料金相当額(二二万四九三〇円)から、家事上の支出に相当する額(家事関連費相当額)として八万三六七六円(総務庁統計局作成の家計調査年報(昭和六三年版)の「全国平均(年平均一か月の支出)・「世帯人員四人」の電気料金六九七三円に一二を乗じて計算)を控除して算出した額であり、原告の審査請求における主張額と同じである。

(4) 旅費交通費 一万九二七〇円

現金帳において旅費交通費として記帳された金額のうち、記帳されている日付及び金額が保存されている領収書の記載と一致するものの合計額である。

(5) 通信費 一四万六〇二六円

原告が支払った昭和六三年分の電話料金に相当する額(二一万七五七〇円)から、家事上の支出に相当する額として七万一五四四円(前記家計調査年報の「全国平均」・「世帯人員四人」の電話料金五九六二円に一二を乗じて計算)を控除して算出した額であり、原告の審査請求における主張額と同じである。

(6) 接待交際費 四八万円

本件税務調査の際に、原告から提示された資料に基づいて認定した平成元年分の接待交際費の額を考慮して、昭和六三年分のそれとして相当と認められる額を算定(一か月当たり四万円とし、これに一二を乗じて計算)したもので、原告の審査請求における主張額と同じである。

(7) 損害保険料 一七万二三八〇円

現金帳に保険料として記帳されている金額の合計額で、原告の審査請求における主張額と同じである。

(8) 修繕費 三五万七四三〇円

現金帳に修繕費として記帳されている金額の合計額(一六万九四三〇円)に、本件税務調査の際に原告が申し立てた事業用タイヤ代(一八万八〇〇〇円)を加えた額で、原告の審査請求における主張額と同じである。

(9) 消耗品代 五万八三六六円

原告の事業の用に供する複写機のパフォーマンス代であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(10) 減価償却費 一六九万五〇九五円

原告の事業用の固定資産に係る減価償却費の合計であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(11) 利子割引料 一九二万一一〇〇円

原告の六三年分決算書に記載された金額である。

(12) ガソリン代 四九万六六八六円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定したガソリン代であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(13) 組合費 五万一〇〇〇円

原告の六三年分決算書に記載された金額である。

(14) 新聞図書費 二一万円

原告の六三年分決算書に記載された金額である。

(15) 事務消耗品費 七二万一五八四円

現金帳に消耗費(二七万三五九〇円)及び事務用消耗品費(四七万二二一四円)として記帳された金額の合計額(七四万五八〇四円)から、右(9)の消耗品費との重複計上部分(二万四二五六円)を控除した金額である。

(16) 研究費 二七万二七七〇円

現金帳に研究費として記載されたものの合計額(一八万四四五〇円)に、原告が審査請求時において提出した株式会社アシレックス等に対する支払額の合計額八万八三二〇円を加算した額である。

(17) 外注費 一〇万六〇〇〇円

原告の六三年分決算書に記載された金額である。

(18) 繰延資産の償却費 一二三万七八六一円

ソフトプログラムの償却費であり、その算定の経過は別紙五のとおりである。

(19) 雑費 一四万五五六一円

現金帳に雑費として記帳されている金額(一八万三五六一円)から、売上原価との重複記帳と認められる額(株式会社エムアンドエムに対する支払額三万八〇〇〇円)を控除した額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(四) 事業専従者控除の額 一〇五万円

法(昭和六三年法律代一〇九号による改正前のもの、以下同じ)五七条三項に基づき算定した原告の妻(六〇万円)及び長男(四五万円)係る事業専従者控除の額である。

(五) 事業所得の金額 二六八万一〇二二円

前記(一)の額から(二)ないし(四)の合計額を控除した額である。

(六) 所得控除の合計額 九七万五一九〇円

原告の確定申告に係る額である。

(七) 課税総所得金額 一七〇万五〇〇〇円

前記(五)の額から(六)の額を控除した額である(ただし、国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満切捨て)。

(八) 所得税額 一七万〇五〇〇円

昭和六三年分の所得税の臨時特例に関する法律三条に基づき算定した金額である。

(九) 源泉徴収税額 一八〇〇円

原告の売上先である有限会社アーキテクツインターナショナルが原告に対し支払った報酬に対する源泉徴収税額である。

(一〇) 納付すべき税額 一六万八七〇〇円

前記(八)から(九)を控除した額である。

2 平成元年分

(一) 収入金額 二四四三万六二六七円

右金額の内訳は、別紙二のとおりであり、売上金額から、決済に当たり差し引かれた振込手数料相当額を控除した額である。

(二) 仕入金額 一〇〇四万三六九六円

右金額の内訳は、別紙四のとおりであり、仕入金額に、決済に当たり支払った振込手数料相当額を加算した額である。

(三) 必要経費の合計額 八六三万二六一八円

右金額は、次の(1)ないし(19)の合計額である。

(1) 租税公課 五万一〇〇〇円

原告が平成元年五月一一日付けの自動車税の納税告知に基づき、同年五月二六日に納付した自動車税の額である。

(2) 荷作運賃 四万二五二〇円

原告が提出した平成元年分所得税青色申告決算書(以下「元年分決算書」という。)に記載された額である。

(3) 水道光熱費 一七万五五二二円

原告が東京電力に支払った平成元年分の電気料金に相当する額(二五万九七七四円)から、家事上の支出に相当する額(家事関連相当額)として八万四二五二円(前記家計調査年報(平成元年版)の「全国平均(年平均一か月の支出)」・「世帯人員四人」の電気料金七〇二一円に一二を乗じて計算)を控除して算出した額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(4) 旅費交通費 五万二〇九〇円

現金帳に旅費交通費として記載された金額のうち、記帳されている日付及び金額が保存されている領収書の記載と一致するものの合計額である。

(5) 通信費 四一万二一八二円

原告がNTTに支払った平成元年分の電話料金に相当する額(二一万三六二四円)から、家事上の支出に相当する額として七万二四二〇円(前記家計調査年報の「全国平均」・「世帯人員四人」の電話料金六〇三五円に一二を乗じて算出した額)を控除して算出した額(一四万一二〇四円)に、自動車電話の設置及び使用料(二七万〇九七八円)を加算した額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(6) 接待交際費 四二万二九九一円

本件税務処分調査の際、原告から提示のあった資料に基づき算定した額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(7) 損害保険料 一四万五五二六円

原告の元年分決算書に記載された金額である。

(8) 修繕費 一八万〇〇三五円

本件税務調査の際、原告から提示のあった資料に基づき算定した額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(9) 消耗品費 九万二四〇九円

原告が事業の用に供する複写機に係るパフォーマンス代であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(10) 減価償却費 一六二万七四六三円

原告の事業用の固定資産に係る減価償却費の合計であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(11) 利子割引料 一九八万九〇〇〇円

原告の元年分決算書に記載された金額である。

(12) ガソリン代 五〇万九八七二円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定したガソリン代であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(13) 組合費 五万一〇〇〇円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定した組合費の額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(14) 新聞図書費 一五万二八〇七円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定した新聞図書費の額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(15) 事務消耗品費 五八万〇五五〇円

現金帳において、消耗費(一八万五四〇〇円)及び事務用消耗品費(四一万一五四三円)として記帳されている金額の合計額(五九万六九四三円)から、記載誤りの額四〇五〇円(複写機のレンタル料につき一万五〇〇〇円とすべきところ、一万五四五〇円と過大計上した差額四五〇円の九か月分)及び重複記帳と認められる一万二三四三円(三月一三日の四〇〇〇円及び八月一七日の八三四三円の合計)を控除した額である。

(16) 研究費 四一万六二七〇円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定した研究費の額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(17) 外注費 二二万三一〇〇円

原告の元年分決算書に記載された金額である。

(18) 繰延資産の償却費 一二三万七八六一円

ソフトプログラムの償却費であり、その算定の経過は、別紙五のとおりである。

(19) 雑費 二七万〇四二〇円

本件税務調査の際、原告が提示した資料に基づき算定した雑費の額であり、原告の審査請求主張額と同じである。

(四) 事業専従者控除の額 一二七万円

法五七条三項に基づき算定した原告の妻(八〇万円)及び長男(四七万円)に係る専従者控除の額である。

(五) 事業所得の額 四四八万九九五三円

前記(一)から(二)ないし(四)の合計額を控除した額である。

(六) 所得控除の額 一一一万三六六〇円

原告は、確定申告に当たり、河野重通に係る扶養控除の額を三五万円と計算しているが、四五万円が正しい(法二条一項三四号の二の特定扶養親族に当たる。)ので、確定申告書に記載された一〇一万三六六〇円に、右の差額一〇万円を加算して算定した。

(七) 課税総所得金額 三三七万六〇〇〇円

前記(五)から(六)を控除した額である(ただし、国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満切捨て)。

(八) 納付すべき税額 三七万五二〇〇円

法八九条一項に基づいて算定した所得税の額である。

別表一

本件各課税処分の経緯

昭和六三年分

〈省略〉

別表二

平成元年分

〈省略〉

別表三

青色申告承認取消処分の経緯

〈省略〉

別紙一

昭和63年分の収入金額の内訳

〈省略〉

別紙二

平成元年分の収入金額の内訳

〈省略〉

別紙三

昭和63年分の仕入金額の内訳

〈省略〉

別紙四

平成元年分の仕入金額の内訳

〈省略〉

別紙五

昭和63年分及び平成元年分の繰延資産の償却費

〈省略〉

別紙六

第1表 重加算税の基礎となる税額の計算(昭和63年分)

〈省略〉

第2表 第1表のB欄の〈1〉の「総所得金額」の内訳

〈省略〉

別紙七

第1表 重加算税の基礎となる税額の計算(平成元年分)

〈省略〉

第2表 第1表のB欄の〈1〉の「総所得金額」の内訳

〈省略〉

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